ここでは、2次試験突破の大原則(詳しくは、「2次試験対策:大原則」を参照)である「出題者(=採点者)の立場に立った解答を書く」ために留意すべき点(各論)を、受験校講師の経験も踏まえて、対応が容易な順に記載していきます。
1.綺麗な字で答案を書くこと
最も基本的なことですが、多くの方は疎かにしがちです。
私の場合、多くても一日10枚程度しか採点しませんが、汚い字等で読みづらい答案に関しては、採点者としては読み解くのにストレスを感じてしまいます。
採点枚数の多い本試験の採点者は、そのストレスは相当だと思います。ストレスを感じさせれば不利になるかどうかは採点者次第かもしれませんが、有利になることは絶対に有り得ません。
綺麗な字を書くことは難しいかもしれませんが、少なくとも読み易い字を書くことを意識したいところです。
たまに、消しゴムで消去前の字が薄く残っていたり、解答欄以外の箇所に思考プロセスを記載している答案がありますが、解答を読みづらくするだけですので注意しましょう。
2.設問で問われていることに忠実に解答すること
本試験の設問が曖昧な問い方をするため、やや難しい問題はあるものの、設問で問われている要素を外さない様に注意したいところです。
仮に、設問で問われていることと、異なる要素を解答した答案であれば、下手すれば0点になる可能性もあります。
良くある間違いとしては、「課題は何か」という問いに対して、「××のため生産性が低い」等の問題点を解答している答案です(※課題は問題点を解決するために実施すること)。
私が受験生時代は、最初の5分間は設問内容(=問われていること)と解答要素(=解答すべきこと)を確認するのに、時間を費やしていました。
また、この解答要素を間違えるミスを減らすために、改善提案のプロセスを頭の中に叩きこんでいました。
改善提案というのは、
- 「事実」→「問題点」→「課題」→「改善策」→「期待効果」
のプロセスであり、設問で問われているのは、このプロセスのどの要素かというのを意識して、解答要素を考えることを習慣付けていました。
3.論理を明確にすること
読み易い字で、設問内容に沿った解答要素を考えられれば、後は解答要素の内容を論理的に説明するだけです。
論理的にと言っても、
- 「××(問題点の原因)のため、△△(問題点)となっており、■■(改善策の実施)する必要がある」
という様に文章の因果関係を適切に記載するだけで、難しい話しではありません。
論理が明確でない答案は、採点者は立ち止まって、この受験者は何を伝えたいのだろうかと考えないといけません。これは、多くの答案を採点する採点者にとってはストレスを与えるのです。
例えば、論理的ではなく読みづらい例として、
- 原因と結果に因果関係がない
- 因果関係はありそうだけど関係性に飛躍がある
の様なの文章に採点していいて良く出くわします。
■原因と結果に因果関係がない
例えば、
- 「在庫が増加した結果、利益率が低下している」
の文章はどうでしょうか。
与件文にこの様な結論を導く記載があれば別ですが、一般的には在庫が増えればキャッシュ・フローは悪化するが利益は増加するので、原因と結果に因果関係がない文章になります。
この場合、運良く「利益率が低下している」という結果だけで得点できれば御の字ですが、下手すれば全く得点が入らない可能性すらあります。
■因果関係はありそうだけど論理に飛躍がある
例えば、
- 「新規事業を展開するため、事業部制組織に移行する」
は一見正しそうに思えます。
ただし、事業部制組織を採用するための理由としては、もう少し補足しなければ因果関係が上手く繋がりません。
つまり、論理が飛躍しており、何で事業部制に移行する必要があるのかと、採点者に考えさせてしまいます。
少し補足して、
- 「新規事業の展開においては独立採算性の強化が必要なため、事業部制組織に移行する」
とすれば、因果関係が明確になります。
4.出題者が問いたい論点を解答できているか
出題者の意図を汲み取った解答ができるかどうかですが、ここが一番難しいポイントになります。
事例Ⅰ~Ⅲにおいては、一般論的な知識をベースにした記述ではなく、事例文に散りばめられたヒントに基づいた記述になっているかどうかに注意したいところです。
回答させたい論点を決めた上で、ヒントをりこむ形で事例文は作られますので(詳しくは、「2次試験対策:大原則」を参照)、事例企業の特徴を踏まえる等事例文を引用しなければ、出題者の意図を汲み取れてないことになります。
また、事例Ⅳの記述問題は、単純に計算結果の数値を羅列するのではなく、その背景にある出題者が問いたい論点を解答したいところです。
例えば、
- 「新システムの導入により、収益構造はどの様に変化するか」
という問いがあった場合は、どの様に解答するでしょうか。
おそらく、多くの受験生は、
- 「新システム導入前は●●%だった損益分岐点比率が、システム導入後には●●%に低下する」や、
- 「新システムの導入により、固定費が削減された結果、収益構造は改善する」
という様な記述をすると思いますが、それだけだとライバルに差をつけることはできません。
この場合、出題者が問いたいのは、以下の4つの論点だったりするのです。
- 損益分岐点(比率)がどの様に変化するか→「低下する」と答えてほしい
- 新システム導入後の損益分岐点(比率)はどうなるか→具体的な数値を計算してほしい
- なぜ損益分岐点が低下するのか→「固定削減(限界利益率向上)で、低下する」と答えてほしい
- 収益構造はどの様に変化するのか→「損益分岐点(比率)の低下により、利益の出易い収益構造に改善する」と答えてほしい
ですので、
- 「固定費削減により損益分岐点(比率)が●●に低下した結果、利益の出易い収益構造に改善する」
と解答すると、出題者が解答してほしい4つの論点を踏まえた解答になるのです。
また、採点の基準としては、20点の設問の場合には、各論点で5点の配点だったりしますので、より多く出題者の問いたい論点に解答しているかで、得点が変わることになるのです。